ピーナッツくん『Tele倶楽部』

至極真っ当な「異形」

 日本のVtuberによる、1年ぶり2枚目のフルアルバム。

 落花生であることを差し引いても、異形だ。主なコミュニケーションは動画を介してのみ行われる上、姿形も3DCGで描画されるVtuberといった肩書きは、ヒップホップについてまわるリアルさとは程遠く見えるからだ。実際、女性Vtuberを多数参加させて繰り広げる思わせぶりなイチャつきや”SuperChat”での拝金主義はキャッチーなキャラクターのためか、ヒップホップコミュニティのそれをただ模倣したようにも映る。
 ならば本作は、フェイク野郎が作った単なる戯れなのだろうか。答えは否だ。本作は「バーチャル(≒手が届かない、触れられない)な存在への思いはリアルである」というテーマを貫くことで、その誹りをねじ伏せる。”My Wife”での男女双方が抱く虚しさや”Unreal Life”で見せる諦念は紛れもなくリアルで、どうしようもなく寂しい。
 最初の疑念に戻ろう。確かにピーナッツくんは異形である。だが、ここまで述べてもなお彼や本作を「リアルでない」と呼ぶならば、あなたに音楽を聴く資格はない。それに、異形こそが正道になることは彼の歩みや知名度そのものが証明している。

  • Review